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帽子につけるバッジ(5才)

記憶

盛岡は雪国なので子どもも毛糸の帽子を被る。

 

ある日、父は私の毛糸の帽子にエーデルワイスの白いバッジをつけてくれた。父の帽子は水色に白いラインだったが、自分の帽子は良く憶えていない。

 
帽子をかぶって保育園に行くと、ある男の子に「そのバッジちょうだい」と言われた。それまで、○○してくれだとか言われたこともなかったが、断ったこともなかったので、断り方がわからなくて、困った。困ったあげくに嫌だけどあげてしまった。帰って母に言うと「どうして大切なバッジをあげたくないのにあげたのか、明日返してもらいなさい」と言われたが、そんなことは言いたくなかったし、それよりも困ったことや断りきれなかったことについて優しくして欲しかったがそうは言えなかった。母は厳しいと思った。
 
翌日は母が怖い一心で「返して…」と言ったらその子も返してくれたけれど、だからと言ってなにか言うべきを言ったという達成感はなかった。
なにか自分の意と反したことに渋々了承すると、いずれ母に見つかった場合には「本当にそうしたいのか?」と問いつめられてしまう、それが嫌だと思っていた。